声にならない+α






、コーヒーいかがですか?」

(いるー!!)

っていつもの調子で手をあげて返事をしたんだけど・・・忘れてた。
しまったと言う顔をして、慌てて首を縦に振って肯定の意味を八戒に伝える。。

「分かりました。ちょっと待っていて下さいね。」

それを見てもいつもと同じ笑顔を浮かべ台所へ向かう八戒の背に声のない感謝の言葉を告げる。

(ありがとう。)





この間風邪をこじらせちゃって、その影響か分からないけど声がかすれて出なくなってしまった。
現代にいる時は大して困らなかったんだけど、こっちに来たら悟浄も八戒も無茶苦茶心配して薬だ漢方薬だと色々飲ませようとするから・・・困った。
そりゃ心配してくれるのはありがたいけど、突然沸騰した緑色の液体を差し出されたら・・・逃げるよ。
苦いの嫌い、漢方薬嫌い、薬なんて嫌い!って口をパクパクさせて両手を振って逃げてたんだけど結局二人に押し切られて一口飲んで、ぶっ倒れた。



――― あんなにまずい薬飲んだの・・・初めて。



それから普通に食事をして、動き回るあたしを見ていたら声が出ない事以外はいつもと同じだというのに二人がようやく納得してくれて普段の生活に戻った。





ま、声が出なくてもジェスチャーで大体通じるから困らないしね。
そんな事を考えながら早く八戒戻って来ないかなぁと台所を見ていたら、買い物に出掛けていた悟浄が戻ってきた。
何かお土産あるかなぁと言う思いを隠しつつ立ち上がって悟浄を出迎える。

(お帰り悟浄!)

「タダイマ・・・ってまだ喋れねェのか。」

(うん・・・)

こっちに来て3日間ほど声が出せていない。
話をするように口を動かしてノドから声を出そうとするけど、やっぱりかすれた空気の音がするだけ。



あーもぉ話せないのってやっぱり辛い!!



「ま、無理して悪化するよりゃマシだろ。」

(うぅぅ〜・・・)

子供のように不貞腐れているあたしを慰めるように頭を撫でてくれている悟浄が、何かを思い出したかのように買ってきた袋の中をあさり始めた。

「・・・っと、あったあった。」

(?)

首を傾げるあたしの手の平に、黄色いリボンのかかった小さな白い包みを乗せてくれた。

「あとでやろうと思ったけど、そーんなカワイイ顔されちゃ・・・お預けなんて出来ねェわ。」

そう言って軽くウィンクする悟浄に・・・思わず見惚れてしまった。
あ、相変わらずこう言うトコは抜け目ないなぁ・・・。
中身が何かは分からないけど、物を貰ったらお礼を言わなきゃね。
あたしはペコリと頭を下げてから、悟浄にも分かるように口を大きく開けてお礼の言葉を言った。

(あ、ありがとう・・・)

「どー致しましてv」

ニッと笑ってあたしの肩をポンポンッと叩いてから、テーブルへ荷物を置きに行った。
あたしは再びソファーに戻って腰を下ろすと、早速悟浄がくれたお土産を開けて見る事にした。
黄色いリボンを解いて中身を手の平に出してみると、丸い黄金色の小さな飴が数個転がり落ちてきた。

(・・・飴?)

「蜂蜜飴だってよ。」

(ハチミツ・・・)

「ノドにいいって店のオバチャンが言うから買ってきた。」

荷物を置いて窓を細く開けて煙草の煙があたしに来ないよう気を使ってくれている。
こんなちょっとした気遣いが、凄く嬉しい。

「早く良くなるといいな、ノド。」

(・・・うん!!)

そこへコーヒーを3つお盆に乗せた八戒が台所から現れた。

「お帰りなさい。悟浄も飲みますか?コーヒー。」

「あぁそこ置いといてくれ。」

・・・凄い、八戒って悟浄が帰ってくるの分かってたのかな?
だってあたしにコーヒーを勧めてくれた時、悟浄いなかったよね?
以心伝心を目で見てしまった・・・あたしもいつか二人の事、それくらいわかるようになるのかな?
そう考えていたら八戒がソファー脇のテーブルにあたし用のマグカップを置いてくれた。

「お待たせしました。の好きなカフェオレです。」

(ありがとう八戒v)

「・・・おや?美味しそうな飴ですね。」

八戒の視線があたしの手の中にある飴に向いていたので、1つとって八戒に差し出した。

「え?いいんですか?」

コクコクと頷いてから、あたしはもう1つ取り出して窓辺にいた悟浄へ差し出す。

「オレも?」

そしてもう1つ取り出すと今度はその中身を自分の口の中へ入れる。

(美味しい物は皆で食べた方が美味しいもん♪)

口をパクパク動かしながら、声が出ているようにそう言った。



・・・二人に分かるわけないか。



そう思っていたのに、悟浄と八戒は顔を見合わせると同時にその飴を口の中に入れた。

(ほぇ?)

「ハチミツの飴だったんですね。」

「ゲロ甘。」

「自分で買っておいて何を言うんです?」

「オレはチャンに買ってきたの。」

「じゃぁ食べなきゃいいじゃないですか。」

「・・・じゃぁお前も食うなよ。」

二人が顔を見合わせてそんな事を言ってるから、間にいるあたしはただオロオロするだけ。
うわぁっあたしが飴を二人に渡さなきゃこんな事にはならなかったのに、何てことしちゃったんだ!?
でもすぐに二人は頬を緩ませて同時に同じ言葉を言い出した。



「美味しい物は皆で食べた方がより美味しいですよね。」
「ウマイモンは皆で食った方がよりウマイよなv」



ハチミツの甘さが口全体にじわぁっと広がり、心と身体を包んでいく気がする。



・・・以心伝心、あたしも二人と心が通じ合ってるって思っていいのかな?





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オマケです。
え?何?これもリクエストじゃないかって?
・・・オマケです(笑)だってほら、基本である調子にのって色々喋るシーンがないでしょう?
本当はこの後にそのシーンを書こうとしたんだけど書けなかったんだもん(笑)
でもせっかくほのぼのと可愛らしく書けてるから没にするのも勿体無くて・・・救済処置を取ってみたw
いいんです・・・自己満足だから(苦笑)
無闇に長いオマケでどうもすみませんでしたm(_ _)m